ハネカクシは甲虫の仲間として知られており,前ばねが短く腹部が露出するという独特な形態的特徴をもつ種が多いことから,「翅隠(はねかく)し」という特異な和名が付けられた分類群です.ヒゲブトハネカクシの仲間もハネカクシの一員です.
ヒゲブトハネカクシの仲間は世界中から,およそ14000種が知られる非常に大きなグループとして知られています.分布は極めて広く,赤道付近の熱帯地域はもちろんのこと,極寒の北極や南極といった極地域にも生息が確認されています.また,地球規模の環境だけではなく,高山・地中・海岸・樹上・洞窟などの他,鳥類や哺乳類の巣・アリやシロアリなどの社会性昆虫の巣といった,あらゆる小環境にも適応しています.
この仲間の大部分の種は体長が2ミリから6ミリ程の目立たない大きさなので,お世辞にも一般的に馴染みのある昆虫とは言えません.しかしながら,一つの分類群としては極めて異例な際限のない多様性や環境適応力には眼を見張るものがあります.
一体彼らはどのようにして,そのような多様性や適応能力を手に入れたのでしょうか?
私はその謎を解明することが,人類の将来に役立つものと信じています.例えば,現在扱っているヒゲブトハネカクシ属は,ハエ類に捕食寄生することが知られており,伝染病の予防やハエ類の個体数調節に応用できる可能性を秘めています.
このホームページを通じて,日本語の情報がほんのわずかしかないヒゲブトハネカクシに関する情報発信を研究と並行して行い,出来る限り社会に成果を還元することを目指します.
文責:山本周平